大自然に囲まれた大仁農場にて、偉大なる自然を、いかに現代の農業に生かすことが大切なのかを、皆で学び、自分も生かされていることがわかりました。
『自分』とは『自』然の『分』身である
自然農法の体験を生かし、今後共地域の特徴を生かして、収穫野菜の育成管理の向上を推進して行きたいと思います。
来訪者の皆様へ
ナスやキュウリ等の夏野菜の収穫が始まっているところもあります。
夏野菜では、実りがなる果菜類がメインの作物となりますが、秋作からは、葉菜類、根菜類がメイン作物になります。
また、栽培環境も、夏作とは逆の環境になってきます。
今回秋作について、以下の4つの項目を学んでいきます。
- 秋から冬の栽培環境と育成のポイント
- 種まき・定植
- 生育の特徴と管理のポイント
- 次作に向けての準備
では、学んで行きましょう。
1.秋から冬の栽培環境と生育の特徴
(1)栽培環境の特徴
作物が育っていくには、自然界からエネルギーを頂いていかなければなりません。
MOA自然農法では、太陽からのエネルギー(光、温度など)、月からのエネルギー(水など)、土からのエネルギー(土の栄養分、地温など)を発揮させることが重要と考えています。
これらのエネルギーは、四季がある日本では、その季節によって変わってきます。
よって、作物を栽培する季節の特徴を掴んでおく必要があります。
右図は三島市の年間の平均気温と、日長時間の変化です。
春作が気温が低い状態から気温が徐々に上昇し、日長もだんだん長くなるのに対して、秋作は気温は冬に向けて急激に下降し、日長も冬至にかけてだんだん短くなっていきます。
(2)生育の特徴
秋作の栽培環境から、生育初期は気温が高く、生育後半は気温が低い時期にあたります。
例えば、ハクサイの生育適温は生育初期は約20℃ですが、育成後半の結球適温は15℃前後で、それより温かいと結球が遅れ、病害も起こりやすくなります。
また、ダイコンの生育適温は18~20℃ですが、肥大適温は16℃前後で、それより高温は、根の肥大が悪くなったり、品質が低下したりします。
この作型は生育初期は気温が高いため、生育が早いものが特徴です。
しかし、ハクサイの結球時期や、ダイコンの肥大期の気温が低すぎると、寒害をうけてしまいます。
また、気温の変化が激しく、低温にあって、その後、気温が高い状態にあうと、とう立ちしてくることがあります。
2.種まき・定植
(1)作物と品種の選定
現代ではスーパーなどに行けば、どんな野菜も1年中出回っていますが、野菜には、本来の旬があり、その気候が一番作物にとって、育ちやすい気候です。
秋作を行う上でも、この時期の旬の野菜を基本的に選んで育てましょう。
例えば、ダイコン、ハクサイ、キャベツ、カキナ(菜の花)などが挙げられます。
また、選定した作物の中でも、越年する場合など、寒い時期にあたる場合には、寒さに強い(耐寒性)品種を選定しましょう。
また、春取りキャベツや春取りダイコンのように、寒い時期を乗り越え、暖かくなってきたときに収穫する作物については、とう立ちしにくい(晩抽性)品種を選定します。
品種に関しては、F1品種だけでなく、地元に昔から伝わる品種を作ってみるのも面白いと思います。ダイコンや、菜っ葉類などは、全国的に地元の品種があるようです。
(2)畑の準備と種まき
種まきの前には畑の準備が必要です。特に、ダイコンやニンジンなどの根菜類は、土の中に未熟な有機物があると、それを抱えるように又根になってしまいます。
又根を避けるには、堆肥を用いる場合には、完熟に近い状態のものを用いたり、未熟であれば、種まきよりも前に十分な期間を取り、畑に用いたり、前作の根や雑草の根が残っている場合、しっかり分解する期間を取る必要があります。
「秋作は播種が1日遅れると、生育が1週間遅れる。」と言われるくらい、気温の低下、日長の短縮が早い作型です。
よって、寒い時期に入ると、生育が急激に遅くなるため、暖かい時期にいかに生育を進めるかがポイントとなってきます。
しかし、早播きすると、夏の高温・乾燥・病害虫の害を受けやすく、逆に遅播きすると、低温に遭い、肥大充実が悪く、寒害を受けやすくなります。
よって、自分の地域によって、適期の播種が大きなポイントとなってきます。
周りの自然農法実施者の方々に聞き、参考にしてみると良いでしょう。
(3)定植
秋作で苗を定植するときに気をつけたいことは、まだ暑い時期に定植する時に畑が乾燥している場合があります。
その時には、事前に畑に水遣りをしたり、定植後に水遣りをしたり、苗をどぶ付けしたりして対応しましょう。
また、越冬する野菜については、定植時の苗の大きさが、収量・品質に大きく影響してきます。
たとえば、タマネギは、茎の太さが鉛筆(6mm)くらいが良いと言われています。細すぎる場合は霜害に遭いやすく、ひどい場合は、苗が枯れたりします。
また、太いと始めの育成は順調ですが、収穫直前にとう立ちしてくる可能性が大きくなりますので、注意が必要です。
もし、タマネギがとう立ちしてきたら、早めに収穫し、葉タマネギとして収穫すれば、玉は小さめですが、葉も食べることができます。
3.生育の特徴と管理のポイント
(1)まびき
秋作では多くの根菜類(ダイコン、カブなど)や葉菜類(コマツナ、ホウレンソウ、など)は、直播することが多いため、まびきの時期、仕方がポイントとなってきます。
まびきが遅れると、生育が悪くなったり、病害虫の発生、徒長したりします。
まびきの時期は目処として、本葉1~2枚の頃に一回、本葉4~5枚の時に入ります。
(2)害虫防除
温かい時期には、虫の行動も活発で、気温が下がってくるまでには注意が必要です。ちょうど、蝶や蛾などの産卵時期にあたるため、作物の葉に産卵し、幼虫が葉を食害したりします。
右の写真では、ヨトウ虫にどんどん食害され、葉脈だけになってしまいました。
また、暖冬の場合には、害虫が越冬しやすく、春・夏作に被害が出やすいので、注意が必要です。
右写真は、暖冬のために、アブラムシが死滅せず、越冬した時の様子です。
害虫防除の方法としては、
害虫を見つけて直接退治する(捕殺)、
ネットや不織布を張り、害虫の侵入を妨げる方法、害虫が嫌う匂いや色を持つ作物を一緒に植えたり(混植)、
逆に、害虫が好む作物をわざと栽培し、そちらに害虫が寄り付くようにし、メインの作物に害虫被害が及ばないようにする(おとり作物)方法などが挙げられます。
(3)温度管理
作物には生育適温があります。秋作では、生育前半が気温の高い時期にあたりますが、酷暑では作物の適温から大きく外れ、生育が緩慢になりがちです。
その対策として、適時、潅水することで、土の乾燥と地温の上昇を抑えることが考えられます。ただし、気温の高い日中に葉に水がかかり、その水が高温になると、葉が焼けてしまう事があるので、注意が必要です。
また、黒寒冷紗で遮光し、気温を下げる対策も考えられます。
逆に気温が下がり、生育の遅れが気になる時には、不織布やトンネルビニールで保温し、育成を促進させてあげることが考えられます。
ⅰ.収穫時の注意
作物が十分に育ってきたら、いよいよ収穫です。
適期に収穫する収穫することが大事です。
なぜなら、収穫時期が遅れると、ダイコン等の根菜類では、スが入ってしまうことがあります(品種によっても、入りやすい、入りにくいものがあります)。
また、ニンジンでは、大きくなりすぎると、割れが入ってくることがあるので、注意が必要です。尚、ニンジンはとうが立ってくるまではスが入りません。
キャベツ等の結球野菜は、上部を押してみて、硬く結球したのもから収穫していきます。硬く結球した後、収穫が遅れ、霜が下りると、上部が被害を受けることがありますので、 注意が必要です。また、下部に水が溜まり、そこから腐敗してくることがあるので、注意が必要です。
ⅱ.収穫期の延長
冬の寒い時期には、収穫物も少なくなります。
そこで、寒さ対策をとって、収穫期を延長する方法を紹介します。
①軽い霜害に対しては、裾空きトンネルで被害を防ぎます。5mほどの畝でしたら、畝の前後を開けておくと良いでしょう。それ以上、長い畝では、状況によって、トンネルの側面も所々開け、高温になり過ぎないように注意しましょう。
②ハクサイは寒さに強い作物です。しかし、結球後に上部が霜害に遭うと、傷んでしまいます。
そこで、下葉を持ち上げ、上部に新聞紙をかけて、紐で縛ると、霜害を避ける事が出来、春先まで収穫が可能です。
③ダイコンでは、青首ダイコンは地上部に根部が出て、そこが霜害に遭いやすくなります。白首ダイコンは地上部に出る部分が少ないため、霜害に遭いにくく、さらに、地上部に出ている根部を土寄せすることで、霜害が少なくなります。
④ニンジンも地上部に出ている根部が無い様に、葉の上から5cm程度土寄せすると、霜害が少なくなります。
⑤収穫後の保存方法では、水はけの良い空き地に穴を掘り、土をかけておけば、春先まで食用に使用できます。土の厚さは関東以西では5cmくらい、寒い地方ほど深くし、さらにコモやムシロ、モミガラなどを使用し、断熱、保温効果を高めます。
⑥ゴボウの保存方法は、長いので、穴を掘るのが大変ですので、斜めにして埋めます。夏・秋取りは、収穫時期が温かいので、5cm程度土をかけ、また、首の部分を地上部に出しておきます。冬取りの場合は、霜害に遭わないように、10cm以上土をかけ、首も出さないようにすれば、春先まで食用に使用できます。
⑦ブロッコリーは一番初めの花蕾(頂花蕾)を収穫した後も、わき芽が出てきて、しばらく収穫を楽しめます。また、頂花蕾を収穫後、株を切り下げると、大きなわき芽が収穫できます。このことは、ホルモンの作用によるものだと考えられています。
⑧アブラナ科などの野菜は、未収穫で春先まで畑においておくと、とうが立ってきます。このとうが美味しく、わき芽も次々出てきて、しばらく収穫できます。
4.次作に向けての準備
秋作が終了すると、寒い時期に入り、栽培できる作物も限られてきます。そこで、春・夏炸準備をしておくことも一つの方法です。いくつか紹介致します。
- 秋作が終了した後、春・夏作の準備として、土づくり・畝作りをしておきましょう。
特に、火山灰土壌では、乾燥しやすい土質なので、年内に畝作り、枯れ草などで被覆し、土を落ち着かせ、乾燥防止を図ると良いでしょう。 - 冬期に土を乾燥しないように、麦類やカラシナなどを播き、土の保護を図ると共に、作物の根による土作りを進めて行きましょう。
カラシナ栽培後、土にすきこむことで、センチュウの被害を減らす効果があります。 - 冬期に落ち葉・枯れ草などを集め、敷き草の材料確保や、堆肥作りをしておきましょう。
- 冬期の時間に余裕のある時に、栽培計画の見直しと、1年の栽培計画を立てましょう。
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![]() 野島農園耕作者 野島貞夫 |
以上、秋作について記載致しました。
野島農園にて、安心・安全に育たて大根を、子供達が元気よく、楽しく収穫した様子です。
文責:
門前自治会会長 野島貞夫
TEL:090-3224-0278
FAX:042-476-2555
mail:nojima.sadao@jcom.home.ne.jp
※MOA健康生活(自然農法)ネットワーク監修
※写真掲載了承済